序言 1
1.序 言
分子科学とは,.豊かな自然において多様な物質循環,エネルギー変換を司っている「分子」についての知識を深め, 卓越した機能をもつ分子系を創成することを目指す学問です。分子科学研究所は,そのような分子科学の研究の中核 拠点として実験的研究および理論的研究を行うとともに,広く研究者の共同利用に供することを目的として1975年 に設立された大学共同利用機関です。国際的な中核共同研究センターとして,国内外の分子科学研究を先導すると同 時に,生命科学・天文科学などをふくむ,分子が関与する広汎な関連分野と協同して,科学の新たな研究領域を創出 することも目標としており,現在,理論・計算分子科学,光分子科学,物質分子科学,生命・錯体分子科学の4つの 研究領域と,極端紫外光研究施設を始めとする7つの研究施設を擁し,分子の構造と反応と機能についての先鋭的な 基礎研究を進め,分子の新たな可能性を探っています。
このリポートには,2012年における各研究グループと,所としての活動状況が述べてあります。分子研では(1)
「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(H P C I)の構築」,(2)「ナノテクノロジーネットワー クプロジェクト」,2012年7月からは「ナノテクノロジープラットフォーム」,(3)理研との共同による「エクストリー ムフォトニクス研究」,(4)「量子ビーム基盤技術開発プログラム」,(5)「最先端の光の創成を目指したネットワーク 研究拠点プログラム」等の特別プロジェクトが進行中です。
また,国際的事業として特にアジア関係の2つのプログラム,すなわち(1)アジア研究教育拠点事業(アジアコア; 日本学術振興会)と(2)21世紀東アジア青少年大交流計画(J E N E S Y S . Program;日本国際協力センター),を遂行 してきました。前者は,アジア諸国の研究教育拠点機関をつなぎ,物質・光・理論分子科学のフロンティア分野にお ける研究教育拠点の構築とともに次世代の中核を担う若手研究者の養成を目的とする事業であり,2011年度から
「I M S アジアコア」として実施しています。後者は,東アジアの学生,若い研究者の招聘,教育,研究の実施,また 現地との交流などを行ってきました。この J E NE S Y S . Program のポスト Program として,現在分子研独自の E X OD A S S プログラムを実施し,新たな展開を計っています。
2011年3月末の西,薬師,宇理須教授,2012年3月末の永瀬,平田,田中教授に続き,2013年3月末に桑島 教授が定年を迎えられ退職されました。また唯准教授が名古屋大学教授,また永田准教授が名城大学教授として転出 しました。これらの先生方は分子科学研究所の研究,運営の根幹を担ってこられました。ここに改めて感謝をささげ たいと思います。さらに助教を含めると,2012年度に15名の教員が転出したことになります。このように,分子 科学研究所は人事面でも大きな変化の時期にあります。
このような変革時,しっかりとした研究の方向性と運営方針を定めるため,多くの P I と一緒に新しい研究の方向 を模索してきました。その結果の一つとして,分子スケールナノサイエンスセンターを改組し新たに「協奏分子シス テム研究センター」が2013年4月から発足しました。(http://ci mos.i ms.ac.j p)これは,自然界で多重の階層を越えて 機能している分子システムの知恵に学び,「柔軟かつ堅牢で卓越した機能をもつ分子システム」を構築することを目 的とした研究センターです。秋山教授(2012月4月に教授に着任)をセンター長として,専任,3教授,2准教授, 2特任准教授(若手独立フェロー),さらに兼任(務)である3教授,3准教授の構成員で出発しました。最終的に
2 序言
は分子科学研究所の約半分の所員が関わる大きな研究センターとなります。
カルフォルニア大学バークレイ校の副学長(研究担当)の Graham.F leming 教授と大阪大学の特任教授の柳田敏雄教 授 に 研 究 顧 問 と し て プ ロ ジ ェ ク ト 研 究 の 進 め 方, 研 究 の 将 来 構 想 な ど に つ い て 提 言 を し て い た だ い て き ま し た。 F l emi ng 教授は2012年10月に5日間にわたり,新任研究グループのヒヤリングをおこない,また研究所の在り方な どに種々の提言を,また,カナダ国マクマスター大学 A dam. Hitchcock 教授に UV S OR の研究・運営評価をして頂きま した。
岡崎から次世代の核となる学問を生みだす新たな出発点に分子科学研究所は今立っています。皆様のご支援とご協 力をお願いいたします。
2013年4月 自然科学研究機構 分子科学研究所 所長 大峯 巖